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Interview
理事 岡本 孝伸
株式会社ドコモ・プラスハーティ
業務運営部担当部長
岡本さん自身の障害者雇用との関りについて/きっかけとなったもの・ご自身の変化
私の障害者雇用との関わり、きっかけというのは、一冊の本との出会いが基になっています。
時期で言うと2009年の春でした。
たまたま手に取った本で「日本でいちばん大切にしたい会社」という本があるんですけど、そこの中で知的障害のある方の働くというところを扱っている章がありまして、それを見たときに私も障害者雇用の道に進みたいなと思ったのがきっかけです。
私がそれからどう変化していったかっていうと、まあ人生がまさに変わってしまった、ですね。
何かをしたいと本気で思ったことがなかった人間が、その一冊の一章を読んだことによって、深くこの道を志したいというふうになりました。
それが生き方そのものであったり、人との接し方に影響を及ぼす。
もちろんマネジメントについてもそうなんですけれども、多くのものを学ばせてもらった、吸収させてもらった、っていうふうに思っています。
大企業が取り組む障害者雇用について/新会社設立から特例子会社に認定されるまで
私がその本に出会って、自ら会社を立ち上げないと思った通りのことはできないんじゃないかと思って、いろいろ動き回っていたところで、たまたま私のいる会社で障害者雇用専門の部署を(私がいるのはドコモグループの会社なんですけれども)グループの中で初めてそういった動きが出てきたっていうのと、私が調べてた領域が合致したっていうのが実はきっかけなんです。
それで、検討している人にちょうど話をする機会があったんで、障害のある方を採用するって聞いたんだけど、どんなことを考えてんの?って聞いたら、まさにあの知的障害者の雇用を考えていて、今社内でプロジェクトを作ろうとしてるっていうのを聞いたので、私も参加させてほしいって。
そこから、参加させてもらったところを私が勝手に動き回って収集していった情報であったり、こうしたいっていうのが、役に立てることができそうだなっていうことで、立ち上げるんだったら私も参加させてくださいって。
まあ、いろいろ意見を言う機会を得て、そして2012年の12月に、結局その初めてできた部署の管理者として赴任することができたというのが最初のきっかけです。
そこから、どうせなら今やっている仕組みをグループ全体で役立ててほしいので、もうちょっと規模拡大を考えるとなると、その子会社の中の一部署でやっているよりは、特例子会社というものを作って、その中で活動していった方がグループ全体に対する良い影響が与えられるのではないかということで、働きかけを行っていたところ、それを受け入れてくださったんです。
そして2015年に特例子会社という形で、私がいたところの部署を切り出して、発展的に会社化するっていうふうにつなげることができました。
それが現在につながっています。
特例子会社に認定されるまで/認定されるまでの期間
会社をまず作って、そこから事業計画を作って、いつまでにこのぐらいの会社を作りますっていうのを出すんです。
10月に会社を作って、確か翌年の2月だったので、4ヶ月ぐらいで認定はおりたと記憶しています。
もともとそういう会社を作りたかったので、ハローワーク等にご相談するところから始めているので、こうしたらいいですよってアドバイスは事前にいただいていました。
それに則って手続きを進めていきますので、割とスムーズにいきました。
様々な部署から全く経験の無い人が子会社に出向して一緒に仕事をしているのですか?
私のいた会社っていうのはドコモの子会社なんですけど、そこに所属してて、今ここに出向してますが、この会社作った後はやはりドコモからも出向で、この会社を支えるために人が配置されてきます。
他の会社さんからも、まあ、ご縁があれば入ってきますし、いろんな方が運営側に参加していくんですけど、もちろん経験のある人なんていないので、みんなで試行錯誤しながら、そして会社の外にいろんなノウハウがあるっていうことで学ばせていただきながら、こういった活動を進めてきたというかですね、運営をなんとか軌道に乗せてきたっていうところです。
今、新卒採用はいていますか?
障害のある方の新卒採用というのは、たまたまその募集のタイミングがその時期に合うかどうかっていうぐらいで、知的障害のある方に関しては退職補充しかやっていない状態です。
もう一つ、去年の10月から、新しいプログラムとしてキャリアプラスプログラムというのを始めたんですが、4月にたまたま卒業する人が、そのオープン時期に手挙げてくださると、新卒っていうことになるのかなっていう感じです。
もう何年も前から、採用するために一般の学生さんと同じに今動けているかというと、去年から始まったばかりなので、そこはできてないというところです。
「キャリアプラスプログラム」について/構想から実現へ
元々たどっていくと、特例子会社をつくった時にある程度の原型みたいなイメージはあって。
やっぱりこの会社で育成をして、その方たちに働く活躍の場としてグループ各社っていうのを考えていて、収益化するかどうかちょっと微妙だったんですけど、人材紹介の認可はその時とっていました。(今まで実績はない状態)
会社来ていただくとわかると思いますけど、あの賞状みたいな認定の証はずっと前から持ってたんですね。
ただ、今みたいな形で、あの細かいところまでそのプログラムの詳細決めてたかっていうと、それはなくて。
昨今の雇用率上昇のカーブがものすごくきつくなった時に、親会社のNTTドコモから、これからの障害者雇用についてさらに強化していくっていうところの相談を受けた際に、それであれば我々のところだけで採用するというのは、もともとドコモグループの中では考えてなかったでしょうね。
新しいプログラムとして育てて、送り出して、さらに職場定着を図る、育成を図っていくっていうのをグループの中で仕組みとして作りませんかってお話しして、もう二年前になるんですかね。
そこからドコモ本体と一体となって、プログラムを作ってきたっていうところで、ようやく去年の10月からそれがスタートしたっていう経緯です。
色々なところから注目されて取材を受けたり見学に来られたりすることはありますか?
そうですね。まだそれほどはないんですけども、最近少しずつお問い合わせいただいたり、見学にいらっしゃる方も増えてきています。
ただ、恐らく皆さん、私たちのところでは、あの二年限定で採用して、当社の社員としてプログラムに参加していただくんですけど、本当に三年目にその育成した方々をグループの中でもう一度活躍の場を得て羽ばたいていっていただく、っていうのができるのか?みたいなところで、多分様子を見ていらっしゃる会社さんっていうのは多いんだろうな、というふうに思っています。
社内のメンタル不調者への対応などについて/予防への携わり
将来的な姿として、今キャリアプラスプログラムの実践の場としてキャリアプラスセンターっていうのを作っているんですけども、一番いいのは予防のところで携わることだと思っていて、それはキャリアプラスプログラムの中にすでに組み込まれている仕組みがあれば、実はどんどん会社が良くなっていくだろう、っていうふうに思っています。
それは特例子会社で持っているノウハウを一般の職場に広げていこうという取り組みですので、障害のある方が働きやすい環境っていうのが、管理者であったり、同僚の方に対して、一般のスキルみたいなマインドとしてお伝えすることができると思いますし、メンタルダウンみたいなところで休職に至る方っていうのも減ってくるだとだろうとは思っています。
一方でやはりメンタルダウン、それでもしてしまって、職場復帰したいっていう方には、このキャリアプラスセンターでリワークのプログラムを受けていただいて、リスキリングも含めて我々やってますから、同じような仕組みの中で職場復帰を目指すということが可能かなと思ってます。
将来的な構想としてはそこも考えています。
障害のある人と共に働くことで健常者側に起きる変化について
まず、一番私が変わったというふうに冒頭申し上げたところとリンクするんですけど、マネジメントの仕方が大いに変わります。
管理者っていうのは、実は権力を持っているんですね。
力を持っている、何かというと人事権と評価権を持っているんです。
それがゆえに、力を使ったマネジメントっていうのをしがちであるということに、まず気づくようになりました。
なんで気づくかっていうと、それが通じない方っていうんですかね、がいらっしゃる。
知的障害のある人と働いていて、人事権はあまり関係ないようなと。
評価、褒めるっていうことはあるけれども、なんかお金に直結するようなところがあるんで、この人の言うことを聞いておけばいい、評価もらえるみたいな振る舞いをする人はいなかったんですよ。
要は、人として接して、そこの中で自分を見てもらう。
私も皆さんを見るっていう。
人間として基本的なところに立ち返らざるを得ない、嫌なものは嫌だ、注意しようと思っても、我慢して私の前に立つ人もいますよ。
いますけど、逃げる人もいるんですよ。
会社で、ちょっと何何君って言って呼びかけて、逃げるって、あんまり皆さん経験ないと思うんですけど、そうだよな、叱られると思ったら逃げるよな、っていうような、人の心みたいなのが職場に復活したって私は思ったんですけど、そういったものをいつも気づかせてくれるのが障害のある方だったので。
嫌でも十年いると自分が変わらざるを得ない。
だって、私の方がマイノリティなんだもの。
この会社ではっていうところで考えていくと、人との接し方自体がやっぱり影響を受けてくる。
自分の傲慢さっていうのに気づく。
それから、自分の持っている力っていうのも、無意識に振るってはいけないんだなっていうのに気づくっていうのが、やっぱり一番大きかったと思います。
今の課題は?離職などについて
非常に個別性の強いものなので、十把一絡げの回答っていうのはないんですけども。
一番はっきりしているのは、自然体ではうまくいかないっていうところだと思っています。
会社側で障害ある方を受け入れる者にとっても、障害ある方にとっても、自然体でいくとうまくいかない。
ただ、何かというと、あの文化と文化のぶつかり合いみたいな要素があって。
ある意味、初めて出会う時って、お互いにとってのイニシエーションみたいな痛みを伴うじゃないですか。
そこをいかに痛みを軽減して乗り越えていくかっていうところが重要で、お互いに痛みを感じるはずなんです。
そこをどうやっていくの?っていうのが、まさに特例子会社の中に培われていったりしたノウハウっていうんですかね。
知見であったりっていうものが多分大事になってくるんだろうと。
ただ、知っていればうまくいくかっていう問題ではなくて、実は暗記すればなんとかなるとか、マニュアル読めばなんとかなるもんじゃないと。
だけど、70点ぐらいは取れるスキルとか人との関わり方ってあるんじゃないかっていうふうに思ってるんです。
なので、それはお伝えしていって、痛みを軽減するっていうんですかね。
それは会社として目的があれば努力できるんじゃないかと思うんです。
自然体じゃないんだけど、おそらく管理者でも役割を演じているはずですよね。
管理者という地金をすべてさらして、会社で振る舞っている人いないと思うので、その延長上で障害のある方を受け入れて一緒にやっていく。
あるいは障害のある方も職場に合わせた、社会適応っていうところで努力するっていうところがお互いに必要。
どっちかだけがどっちかに合わせろっていうのは通用しないっていうのは課題でもあり、まあ当たり前のことをやっぱり気づかせてくれるっていうところだと思うんですけど、そこが肝じゃないですかね。
共生日本協議会の発足について/一億総活躍社会との親和性
障害者雇用に携わって十数年経とうとしているんですけれども、私たちのグループで。
障害者雇用を進めるといっても限界がありますよね。
一方で目指そうとしている姿みたいなのもあって。
それってでもなにか一つの会社の中で閉じる問題じゃないんだよっていうのは、知的障害に限らずですよ、障害者雇用に携わっている企業さんはみんな思ってんじゃないかなと思ってるんです。
ただ、その会社の枠を超えて、同じ仕組みを作って使ってみたりとか、作り出そうとかっていうことをしていかないと、その単独個者の取り組みとしては、なかなか広げにくい問題であったり、スピード感で劣ってしまったり、やろうと思ってんだけどお金がかかるよね、っていうところで、なかなか全体としての動きっていうのはできないだろうなと思ってたんですね。
だけど、障害者雇用の世界ってすごいオープンな世界なんです。
お互いに見学会を開いてみたり、交流があったり、質問しあったりっていうところが、親会社がライバル会社であったとしても、割とその共通の課題っていうところを認識しているもの同士っていうのは、まあ同志意識みたいなのがあるんで、日本を良くしていこうっていうところと、そのダイバーシティ・エクイティ・インクルージョンっていう文脈で障害者雇用を進められるんであれば、全然別の話をしてるんじゃなくて、リンクしてくるでしょっていうところで、もう根本的なところでお互いの強みを生かし合ってやっていきましょっていう風に考えると、やっぱりみんなで集える場所っていうのが必要じゃないかなっていうふうに思えたので。
協議会の中でそれを実現したいというふうに思いました。
ノーマライゼーションと障害者雇用について
もちろんあると思ってます。
あのノーマライゼーションって、まあ、いつか当たり前になることっていう私たちの会社のスローガンにもなってるんですけど、それが何かっていうと、いわゆるノーマライゼーションであり、ユニバーサルデザイン的な世界だと思っています。
ユニバーサルデザインの一番大事なところっていうのは、誰にとってもある程度の良さっていうのがあるだろうっていうところだと思ってて。
裏返すとなんていうんでしょうかね、誰かだけに特化したものではないっていう、そこが良さだと思っているので、それがノーマライゼーションのあるべき姿かなっていうふうに思っています。
だからこそ、職場の中で多様な人材がそれぞれの能力を発揮する、っていうところに全員が目を向けてやっていければ、企業も強くなる、日本も強くなる、っていうところにつながると思っています。
共生日本協議会に集まった人たちについて
そうですね、餅は餅屋という言葉がある通りで、広く薄くこの世界でっていう方々ではない人たちが集まってきている。
なんでみんなで集まるのっていうと、専門分野を持っている人同士がお互いに協力し合って、課題解決であったり、そういったところに向かうっていう仕組みが作れる。
そのためにはやっぱりとんがった人たちが集まってないとダメなんですよ。
深い井戸が掘れる人たちっていうか、深い井戸を掘れる人が理事なんです、うん。
だからこそ、共生の社会をみんなで目指そうっていうところに行けるんだと思います。